理事長挨拶

日本摂食障害学会理事長 永田 利彦

 この度、日本摂食障害学会新理事会において理事長に選出されました。小牧元 前理事長の後任として誠に重責でありますが、力を尽くす所存ですので何卒よろしくお願いいたします。

 摂食障害は青年期女性に好発し、死亡率が最も高い精神障害であり、積極的な治療が欠かせません。これまでの皆様のご努力により、本学会の会員数は徐々に増加していっていますが、まだまだ、積極的に治療に関与する治療者は不足しているのが現状です。医師になって初めて摂食障害の患者・クライエントと出会うのは入院治療の主治医となった時と思います。しかし、研修指定病院の多くが特定機能病院であり、診療報酬上の厳しい制限により、若い主治医が患者・クライエントとじっくり向き合うことができる、長期的視点からの入院治療は不可能となりつつあります。入院治療資源が限られるなか、外来診療を進化させる必要に迫られていますが、それを妨げているのが精神病理の変化です。過去の「純粋」な摂食障害が急減し、それを摂食障害の重症化とする捉え方もありますが、その実は摂食障害の広がりとともに生じた精神病理の多様化であります。

 神経発達症の併存も多く、従来の精神病理的理解は限界に達し、薬物療法も工夫が必要です。しかし、小児神経学の先生、神経発達症が専門の先生、精神科薬物療法が専門の先生、精神病理の専門の先生方で、摂食障害学会の会員の先生は、まだ少数です。そこで、ぜひとも関心をお持ちいただき、この多様化した摂食障害の研究・治療に参加していただき、外来診療の向上のみならず、本学会の発展に寄与していただきたいと考えております。

 そして、色々な専門家の先生方に入会していただいて、協調しあって摂食障害の研究・治療に取り組むためには、よりバランスの取れた、風通しの良い開かれた学会運営が必要だと考えます。オープンで自由に意見交換できる雰囲気の結果、異なった専門家間の交流が深まり、摂食障害学会が今以上に、発展をするものと信じております。

 各地の特定機能病院が、摂食障害入院治療の在院日数と予後に関するデータを収集し、制限の緩和の提案も必要と思います。また各地の専門家達が学会に参加し、開かれた意見交換をすることは、学会と摂食障害センターの協力関係がさらに深まる契機となる可能性があると思っております。

 さらには、摂食障害協会との協力は、一般の方々に、この多様化した摂食障害の理解を広めていく上で、非常に重要・不可欠となりつつあります。より一層の交流、協力によって、バランスの取れた学会の発展が期待できます。

 皆様の、より一層のご協力、ご支援をよろしくお願いいたします。