子どもの摂食障害の臨床的特徴を表1に示した。
5項目それぞれについて解説したい。
1) 拒食(不食)とやせが主症状の症例が多い。
青年および成人の摂食障害は、拒食とやせを主症状とする神経性無食欲症(AN)よりも過食や嘔吐を主症状とする神経性大食症(BN)が多いが、子どもの摂食障害はANが多いことが特徴である。頑固に拒食を続けたり、どうしても食べることができない症例が多い。
2) ダイエットの既往がない症例も少なくない。
青年および成人の摂食障害においては、自らの意思でダイエットを行った結果、体重が減少して摂食障害へ発展していくことが多いが、子どもの場合、ダイエットはなく、自然に食欲が低下して体重が減少していき、摂食障害へ発展していくことも少なくない。
3) 身体症状、抑うつ症状、不適応行動を伴いやすい。
子どもは言葉で自らの感情や考えをうまく表現することができず、心理的な葛藤や悩み、環境ストレス、将来に対する不安などを、頭痛や腹痛などの身体症状、抑うつ気分、気力減退、興味低下などの抑うつ症状、あるいは不登校や引きこもりなどの不適応行動で表現することが多い。その他に、強迫症状、不安発作、対人緊張などの症状が伴うこともある。
4) 典型的な摂食障害の症状が目立たない。
青年あるいは成人の摂食障害では、肥満恐怖や身体像の障害は必須の症状である。また、やせ願望、隠れ食いなどの食行動異常も多くの症例に認められる症状であるが、子どもの摂食障害ではこれらの症状がはっきり認められない場合が多い。しかし、よく観察してみると、点滴を抜いてしまったりして、無意識のうちに体重増加に抵抗しているのではないかと思われる場合がある。
5) 飢餓による影響を受けやすく、身体管理が重要である。
子どもは成人と比較して体脂肪の比率が低いため、少しの体重減少で急激に重篤な状態に陥ることがあるため、身体管理には細心の注意が必要である。
表1 子どもの摂食障害の臨床的特徴
1) 拒食(不食)とやせが主症状の症例が多い。
2) ダイエットの既往がない症例も少なくない。
3) 身体症状、抑うつ症状、不適応行動を伴いやすい。
4) 典型的な摂食障害の症状が目立たない。
5) 飢餓による影響を受けやすく、身体管理が重要である。
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