摂食障害の治療の根本はストレス対処技術の獲得と日常生活における行動パターンの変容である。神経性大食症の患者は、患者自身が過食をおさえることを目的として入院治療を希望することもよくみられるが、短期間の入院治療で十分な治療効果を得るのは困難である。神経性無食欲症においても同じであるが、低体重が進んだ場合は救命の意味で入院させ、生命が安全な状態になるまで体重を増加させる必要性がある。このような症例に対する精神科入院治療での対応に関して説明する。
○行動制限を用いた入院治療
拒食や過食嘔吐、過活動を抑えて食事を摂取する練習をするには、オペラント条件付けを利用した行動療法が有効である。これは体重と食行動のパターンに合わせて行動制限を行い、体重増加と食行動の改善に合わせて行動制限を緩めていく方法である。行動制限により過活動を抑え安全に身体管理を行い、刺激遮断をすることによって食事摂取をすすみやすくする。この治療は精神科においては、本人の自発的な治療意思による「任意入院」で行うことが理想である。しかし、重症例で治療への拒否が強い症例は、生命の安全を図る目的で非自発的な入院である「医療保護入院」にて、強制的に行動を管理し治療を行うことが必要となる。
○治療が困難な症例への対応
治療への抵抗が強い患者は、入院生活においても食事を隠れて捨てたり、病棟内で運動するなど「痩せ」のための行動を抑制することができない。また、様々に医療者を振り回す行動をとり、家族を巻き込んで治療途中で退院してしまうこともある。この疾患の患者は、身体的にも、精神的にも非常に「活動性が高い」状態であり、その活動性をいかに抑えていくのかが入院治療を成功させる鍵となる。また、家族も患者の言動に巻き込まれやすい傾向がある。入院治療を維持するためには患者・家族間に強く介入し、家族が患者に操作されるのを防ぐために面会回数を制限し、家族に対しても濃厚な心理教育を行う必要性がある。 |