摂食障害の治療では、患者さんに対して心理教育を行い、病気についての正確な情報を提供することが重要である。これには、身体的リスクや合併症、必要な栄養摂取、精神病理に関する説明などが含まれる。認知行動療法などの専門的な精神療法においても、心理教育は重要な要素であり、適切な心理教育によって、患者さんは自分の病気に対する理解を深めることができ、回復へ向かう変化を起こす動機づけにもなる。
心理教育を行う際には、現状を変えることに対する患者さんの心の準備度を考慮しながらアプローチしていくことが大切である。たとえば、自分が病気であると全く思っていない患者さんに対しては、標準的な心理教育を行うことは難しく、そのような場合は、治療動機を高めるような(たとえば、動機づけ面接の原理に基づいた)かかわりを続けながら、折をみて、情報提供という形でパンフレットや資料などを勧める方法が現実的である。
患者さんが自分の問題を認識できていて、このままではいけないと思ってはいるが、一方で現状を変えることに対する不安が強く、心理的な葛藤状態に陥っている場合には、心理教育がとくに有効である。この段階の患者さんに対しては、共感的な態度を保ちながら必要な心理教育を行うことによって、患者さんが現状を変えることを決断するのを手助けすることができる。
心理教育を行う際には、理詰めで説得しようとしたり、権威主義的な態度をとったり、批判するような雰囲気になってしまわないように注意する必要がある。このような配慮がないと、患者さんは心を閉ざしてしまい、治療に対する抵抗が強まることになるだろう。
また、心理教育によって、ある意味、患者さんにとってはあまり見たくない現実が目の前に提示されることにもなり、不安になることが予想される。このような不安を支えるためには、共感的な雰囲気を保ち、安定した治療関係を維持していくことが重要である。
|