1. 日本での摂食障害の増加
日本での摂食障害患者数は増加しており、特に過食症(以下BN)の増加が目立つ。拒食症(以下AN)は1950年代より症例報告がなされ、その後徐々に増加している。BNは、1980年代以降急激に増加しており、若年女性の1.4%〜2.9%との報告がある。欧米での有病率は、ANは若年女性の0.1~0.5%、BNは1.5~3.8%であり、日本でもANはそれに近づき、BNはほぼ同程度と考えられている。診断基準を満たさない過食、嘔吐、下剤乱用など食行動異常とやせに関連する問題を抱えている女性はさらに多く存在すると考えられる。
2. 摂食障害の併存症
摂食障害に他の精神障害を併せ持つことは多くの患者で認められる。AN、BNともに約50~60%はうつ病を併存し、半数近くが一度は不安障害を併存しているとの報告がある。強迫性障害の併存が最も多く、30%程度の併存率が、パニック障害も7~14%の併存率が報告されている。社交不安障害(以下SAD)は、ANの20~55%、BNの17~59%に併存しているとの報告があり、過食嘔吐を伴う群に多いことも報告されている。SAD発症が先行している群では、SADの治療を先に行うことも考慮しなければいけないが、SAD併存群では治療中断が多く、まずは良好な治療関係の構築が必要である。
アルコール、違法薬物などの乱用と過食、排出行為(自己誘発性嘔吐、下剤乱用)の関係性が指摘されており、欧米ではアルコール乱用はBN患者の22%に認められるとの報告があるが、日本ではアルコール乱用、依存症の合併は11%以下と報告されている。アルコール依存症が併存している場合は、まずそちらの治療を優先させる必要がある。
パーソナリティ障害の併存は多く、AN患者では33~80%が、BN患者では21~77%が少なくとも一つのパーソナリティ障害を持つと報告されている。AN患者では、強迫性、回避性、依存性のパーソナリティ障害の併存が多いが、過食や排出行為を伴う場合は、境界性、演技性などのパーソナリティ障害も多く見られる。BN患者では、境界性、演技性、強迫性、回避性、依存性のパーソナリティ障害が認められ、境界性パーソナリティ障害が最も多く見られる。
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