対人関係療法(interpersonal psychotherapy: IPT)とは、クラーマンらによって1960年代末から開発された期間限定の精神療法であり、現在ではエビデンス・ベイストな精神療法として認知行動療法と双璧をなしている。当初は成人うつ病外来患者を対象として開発され、後に、様々な対象や様々な障害向けに修正され適用されてきた。グループ療法も開発されている。
  神経性大食症に対しては、複数の信頼できる研究により効果が検証されており、NICEガイドラインをはじめとする国際的ガイドラインにも位置づけられている。18週間の対人関係療法、認知行動療法、行動療法の効果を、治療終結6年後まで追った研究では、治療終結時には対人関係療法群の寛解率が最も低かったにもかかわらず、対人関係療法群の効果は治療終結後にもほぼ同じペースで伸び続け、6年後には認知行動療法を凌ぐほどになっている。日本のパイロット研究でも、国際的なデータと同様の結果が得られている(2007-2009年度厚生労働科学研究)。
  実際の治療においては、症状そのものを変えようとすることはなく、症状をストレスマーカーとして位置づけ、症状の維持因子である現在進行中の対人関係に焦点を当てていく。対人関係の中で安心感や自信が獲得されてくると、食症状も後を追うようにして改善してくる。食症状ではなく対人関係に焦点を当てるため、摂食障害患者に多い併存障害である気分障害や不安障害にも同時に効果を発揮することが示されている。
  神経性無食欲症に対しては、他の治療法と同じく、大規模研究によるエビデンスは未だにないが、神経性無食欲症の発症プロセスは対人関係療法の主要問題領域の一つである「役割の変化」であることが多く、実際の臨床では数多くの例に有効である。大規模研究におけるエビデンスが待たれる。 治療の詳細については出版されているマニュアル等を参照されたい。