痩せすぎモデル規制学会声明

痩せすぎモデル規制に向けて

 日本の多くの若年女性たちが不健康なダイエットに励み、痩せすぎに陥っています。ファッション業界が採用しメディアに登場するモデルは若年女性の美意識やダイエット志向に大きな影響を持っています。若年女性とモデルの健康を守るために欧米では既に痩せすぎモデルが 制限されており、フランスでは痩せすぎモデルを雇用した会社に刑罰が科せられます。残念ながら日本ではそのような動きはありません。日本摂食障害学会は、現状に危機感を持ち、女性の健康と痩せすぎモデルの健康も守 るために痩せすぎモデル規制ワーキンググループを設置し、以下の4つのエビデンスから活動を行っています。

1:摂食障害との関連
 神経性やせ症は極端に食事を制限し健康を害するような低体重に陥り、神経性過食症は間欠的にむちゃ食いし、体重増加を防ぐために自ら嘔吐したり、下剤を大量に使用したりしますが、両者とも背景に痩せ願望、肥満恐怖などがあります。様々な身体、精神症状がひきおこされ、特に青年期の精神障害の中で最も死亡率が高く、慢性化すると治療は困難を極めることが少なくないため、早期発見と発症予防が重要です。
 痩せ礼賛によってダイエットはひろがっており、極端なダイエット後に、リバウンドのむちゃ食いが起こり、肥満や神経性過食症につながることは多くの研究で証明されています。神経性やせ症、神経性過食症ともにほとんどのケースで過度なダイエットが先行しており、ダエットだけで発症するわけではありませんが、重要な発症要因です。

2:肥満との関連
 縦断研究により、若年でのダイエットは将来、肥満になる可能性を高めることが明らかになっています。

3:痩せすぎの健康障害と将来の医療・福祉負担の増大
 若年女性の過度なダイエットや痩せすぎは月経異常・不妊症、骨粗鬆症などの身体的病気などの発症因子になります。また、妊娠中の過度なダイエットなどにより、子宮内環境が低栄養状態に曝されることで生まれてくる児の出生体重が減少し、児自身がその環境に適応するために体質変化を来し、将来、生活習慣病や精神疾患のリスクを高める可能性も報告されています。これらのことは、結果として我が国の医療や福祉の増大につながることも懸念されます。
 また、近年の米国国立老化研究所(NIA)によるアカゲザルの研究では、未だ十分な結論は得られていませんが、幼若の時からの低栄養状態を伴わないカロリー制限が一部の人にとっては生存の危険に寄与するかもしれないことが示唆されています。

4:日本の危機感の低さと施策の数値目標の後退
 経済的に発展すると肥満が増加する世界的傾向に反して、20~50歳代の日本女性では痩せすぎが増加しています。特に20歳代女性は5人に一人が痩せすぎで、2000年の「健康日本21」では「20歳代の痩せすぎを15%以下とする」の数値目標を掲げましたが、達成できておらず、2012年の第二次では「20%以下にする」に後退してしまいました。
 海外では痩せすぎモデルへの規制が進んでいるのに、日本では海外では出場できないほど痩せているモデルがメディアに登場し続けて、痩せ礼賛のメッセージを発信しています。この現状を放置しておくことは、重大な問題につながると私達は考えています。

 私どもは、皆様方のご理解を得て、社会全体の若年女性の痩せすぎの健康被害と痩せすぎモデル規制の必要性の認識を高めていきたいと考えます。今後の活動へのご協力をよろしくお願いします。

痩せすぎモデル規制学会声明(PDF:106KB)